まずクライアント・A社からは、法務担当者1名(以下・法務)、普段から各種制作物を作る際の窓口の責任者1名(以下・制作)が参加。こちらからは私が一人で参加します。制作責任者は普段から私と付き合いがあり、同社のクリエイティブの根幹を担っている方です。パンフレットのトーン&マナーや納期・予算などについては、同氏の決めたことに従う必要があります。以下、会議の流れです。
制作:今回のパンフレットは、個人情報保護法という我々の会社にとって非常に大きな影響のある法律をいかに社員に理解してもらうか、という観点から作るものです。ただ、法律の話って、とっつきづらいじゃないですか? つい手に取って読みたくなるようなトーンにしてほしいんですよ。そしてウチの会社らしい明るい感じで。今後のやり取りは、今回の制作の全般を担当する女性社員が全部やります。一応僕にも同報メールは下さい。何か気付いたことがあったら指摘しますので。
法務:本当に、せっかく作っても読んでもらえないと意味がないので、今日はそこらへん相談させてください。
このように、制作と法務両部門から権限を持っている人が出席し、私に依頼したいことをハッキリと告げるのです。結局、仕事を頼まれる側は、頼む側から明確な意思が伝わってこない限りは、動くことができない。明確な意思というものは責任者しか持てないものです。だから会議は責任者「だけ」が参加すべきだと思うのです。
20分の会議で大事なことはすべて決定する
仮に責任者・吉田(仮名)が「オレ、忙しいからお前出て。あ、ついでに新人の山田も連れて行ってくれ。決まったこと、後で報告して」なんて、会議を部下任せにすると、この部下は何をどうしていいのか分からなくなる。結局、会議では次のような発言を連発することになります。
「あとで吉田ディレクターに確認します」
「部内で検討しておきます」
これでは何も決まりませんよね……。会議に参加した人からすれば、「もう、頼むから吉田さん本人が来てくれよ~。忙しいのは分かるけど、こんな決める権限ないヤツを会議に寄越しても仕事が進まないじゃん……」と嘆きたくなる。
この会議に出席することになった若手2人は、たとえ腹案があってもその場で明確に答えることができません。もし答えてしまったら、後で上司の吉田ディレクターからちゃぶ台返しをくらって、結局仕事が遅延してしまうのではないか、と懸念するからです。だから上記のような答えに終始してしまいます。2人は悪くない。決定権のある人間が会議に出てこないのが悪いのです。