金銭債務は通貨で支払う必要があるというのが民法の原則ですが、この通貨は国が強制通用力を認めた貨幣や銀行券ですから、全部1円玉では20円しか債務支払いの効力はありません。また、そもそも一部の支払いでは、給料債務の本来の弁済にはなりません。
よって、全額受け取りを拒否しても、11万8000円の支払いを求めることができます。労働基準法で使用主は「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めているからです。
通貨は強制通用力のある貨幣や日銀券のことなので、アルバイト先は労働基準法違反です。賃金全額支払いの義務に違反すると30万円以下の罰金となり、処罰される犯罪になります。賃金未払いの問題として、労働基準監督署に相談するのがよいと思います。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2021年6月18・25日号