お金にまつわる「しくじり」を知ることは、「転ばぬ先の杖」となる。これまで1万世帯を超える家計を診断してきた「家計の見直し相談センター」の藤川太氏によれば、“マネー失敗者”たちの「しくじり」の中にはいくつかの共通パターンがあるという。
知らず知らずのうちに「しくじりパターン」にハマってしまい、下流転落の憂き目に遭う人も少なくない。反面、あらかじめそうしたパターンを知っていれば、しくじりを未然に防ぐこともできるだろう。
今回は“お金のお医者さん”として知られる藤川氏が、お金にまつわる典型的な3つのしくじりパターンを、実例とともに紹介。彼らはいったいどうすべきだったのか、アドバイスをもらった。
「お金のしくじり道場」いざ、開講!
しくじりパターン1:自分一人で勝手に行動して失敗
他人のアドバイスを聞かずに失敗し、それを取り返そうと「今度こそ大丈夫」と信じ込み、さらに失敗を重ねる典型的なパターン。
飲食店経営に挑戦した元サラリーマン・Aさん(男性・40代=当時、以下同)
年収1000万円を超える高収入のサラリーマンだったAさんは、かねてから独立心が強く、会社を辞めて、1000万円超の蓄財を元手に飲食店経営に乗り出すことを決意しました。
それまで会社員として優秀な成績を上げてきたとはいえ、飲食店経営に関しては素人同然。小さく産んで大きく育てるのがビジネスの基本なのに、Aさんはいきなり大きな店を構え、預貯金は開店資金で使い果たしてしまいました。
案の定、お店は軌道に乗らず、赤字続き。預貯金も底を突き、金融機関から借金を重ねても客足は一向に伸びません。
子どもが産まれ、たまりかねたAさんは店を畳み、会社勤めに戻りました。ところが、そこで諦めておけばよかったのに、夢を捨てきれず、「今度はうまくいくはず」と親戚から資金を掻き集めて、再び飲食店経営に乗り出します。
私のところに夫婦揃って相談に来たのは、その頃でした。「いったん撤退して足元を固めないと、何もかも散り散りになる」とアドバイスしましたが、Aさんは相当な自信家で「自分ならできる」とまったく人の話を聞こうとしません。
当然、うまくいくはずもなく、やがて奥さんは愛想を尽かして実家に帰り、お店も閉店に追い込まれます。まもなく奥さんとは別居から離婚へと発展し、親戚からも総スカン。Aさんは自分の夢も家族も失ってしまいました。
投資の世界も同じですが、何の知識も経験もないところにいきなり大金を突っ込んでも、うまくいくはずがありません。うまくいく仕組みをつくってからでも、決して遅くはない。Aさんが失敗を重ねることは明らかでした。