田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の配車アプリ・滴滴出行が米上場へ 超大型IPOを取り巻く利害関係者たち

 コロナ禍で人流が大きく制限される中でタクシー需要が減少、2020年12月期は厳しい決算となった。とはいえ、2021年3月末までの1年間におけるアクティブユーザーは4億9300万人(内、中国が3億7700万人)、アクティブドライバーは1500万人(内、中国が1300万人)に及び、世界最大規模である。滴滴出行は巨大市場中国でトップシェアを持つといった大きな強みを持っている。

 自動車業界全体をみると今後、EV化が進むとともに自動運転技術が急速に発展するだろう。配車サービスの提供などを通じて獲得した厚い顧客基盤は需要の構造的な変化に対して高い対応能力を持つはずだ。今後の発展が期待される。

幹事団を組成する欧米系投資銀行の狙い

 バイデン政権は6月3日、軍部との関係の深い企業、人権侵害に繋がる監視技術を開発している中国企業など59社に対して、株式購入などを通じての投資を禁じる大統領令に署名した。これは、トランプ前政権が昨年11月に発令した投資禁止措置をさらに拡大させる内容だ。

 また、トランプ前政権は2020年12月、外国上場企業に対する規制を厳しくする法案「外国企業説明責任法」を成立させた。これにより、監査法人が公開企業会計監査委員会の検査を3年連続で受け入れなかった場合、その監査対象企業は上場禁止となるのだが、現状では、海外の機関が中国国内の監査法人から監査資料を得たり、現地での調査をしたりするのを中国政府は許していない。法案成立を受けてアメリカ証券取引委員会は3月24日、実際に新規制の導入を開始したと発表している。

 多くの民営海外上場企業について、事業の実体は中国本土にあるのだが、租税回避地を本社登記地としている。こうした“細工”はすべて欧米系投資銀行の“入れ知恵”であろう。欧米系投資銀行は、バイデン政権が中国企業排除政策を強化しようとも、それを上手く躱すことができると読んでいるからこそ、幹事団を組成し同社のIPO申請を行ったのではないか。こうした大手投資銀行の動きをみる限り、バイデン政権の対中強硬策は決してアメリカ産業界の総意ではないということが分かる。

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