田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の配車アプリ・滴滴出行が米上場へ 超大型IPOを取り巻く利害関係者たち

 一方、中国政府について、滴滴出行に対する政策スタンスは不透明なところもある。滴滴出行が行なう事業はイノベーションによって世の中を大きく変えていくものであり、そういう点では中国政府は積極的に支持したいと考えている。

 しかし、業界全体は悪性の過当競争に陥りつつある。同社は大量の優待券をばらまき、大幅な赤字を容認する形で顧客の囲い込みを進めたことで、独占禁止法に触れかねない規模まで事業は拡大している。規模の拡大によって管理の届かない部分(サービスの低下、犯罪など)が出てきてしまい、それが問題になったりしている。(当局から圧力を受けたと言われる)アリババのジャック・マーの件があるだけに、共産党とうまく折り合っていくことができるかどうかが、発展のカギとなりそうだ。

ソフトバンクグループは発行済み株式の21.5%を所有

 それにしても、中国企業のイノベーションには目をみはるものがある。

 1983年生まれと若い程維会長が同社を創業しようと思い立ったのは2012年の冬である。北京の凍てつく夜、タクシーが来るのを長時間待ち続けたときに、長い待ち行列ができているのを見て、配車サービスの事業化を思い立ったそうだ。

 それからわずか9年で市場価値が10兆円と評価される企業を作り上げている。創業者である程維会長、柳青総裁の事業にかける情熱は素晴らしい。しかし、このビジネスの将来性を見抜き、創業当時から巨額の資金を投じてきたVC(ベンチャーキャピタル)、エンジェル投資家たちの先見性があってこそとも言える。

 筆頭株主はソフトバンクグループ(Vision Fund)で発行済み株式総数の21.5%を所有。そのほか、Uberが12.8%、テンセントが6.8%の株式を所有している。

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