「コロナ恐慌」で株や債券が急落し、世界の金融市場が動揺したのも束の間。各国が打ち出した大規模な財政出動により、市場は活況を呈している。一時的に急落することなどはあるが、大きな方向性としては上昇トレンドにあるようだ。マーケットバンク代表の岡山憲史氏が解説する。
「コロナ禍以降、株価は一時的に暴落しましたが、戦後最大の財政支出が市場の流れを変えました。巨額の資金が株式市場に向かった結果、昨年度の日経平均株価上昇率は54%に達した。今後もしばらくは低金利が続くと予想され、機関投資家の資金が株式市場や債券市場に向かう流れは止まらないでしょう」
ワクチンの接種拡大を見込んだ市場関係者からは、日経平均について「来年いっぱい金融緩和が続けば3万8000円」と予想する声もある。なかでも注目を集めるのは、一度は急落に見舞われた外食やレジャー、運輸などの「リオープン(経済再開)銘柄」だ。
「米国ではワクチン接種率が10%を超えた2月以降、リオープン銘柄が急騰。その後、欧州でも同じ現象が起きています。日本でも、接種率10%超えを前に電鉄や百貨店などが買われ、年初来高値を更新しました」(同前)
コロナ禍の直撃を受けたリオープン銘柄に「急上昇」の期待がかかると聞くと、“手堅く守るばかりではいけない”と考えがちだが、岡山氏は「投資の世界に“絶対”はない」と釘を刺す。
「例えば底値で空運株を仕込んでも、海外で新たなコロナ変異株の感染が拡大すれば国際線の運航が止まり、業績回復が遅れて株価が下落することも考えられます。資産形成のための投資では1つの銘柄だけに資金を注ぎ込まず、複数銘柄に少額ずつ分散するのが鉄則です」(同前)
マーケットアナリストの平野憲一氏(ケイ・アセット代表)も同意見だ。
「株式市場を見れば、飲食、旅行、航空などの業界で反騰が始まっています。しかし、それらの株価がコロナ前の7割まで回復したからといって“あと3割の上昇”を狙って仕掛けると、手痛い失敗を犯しかねない。コロナ前の世界には、完全には戻らないリスクがあると肝に銘じるべきです」