大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

「日本が財政破綻する確率は100%」と大前研一氏 国民は何をすべきか

海外では巨額債務の「帳消し」を求める議論も出ているが…(イラスト/井川泰年)

海外では巨額債務の「帳消し」を求める議論も出ているが…(イラスト/井川泰年)

 新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響は少なくない。日本でも、今こそ国が財政出動すべきだという声が高まっているようだ。その一方で、“借金大国”である日本の財政状況を懸念する声は少なくない。経営コンサルタントの大前研一氏が、日本国民は国の借金とどう向き合えばよいのかについて解説する。

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 新型コロナウイルス禍が長引く中、欧州ではユーロ圏各国が大規模経済対策で多額の国債を発行している。そこで、ECB(欧州中央銀行)や各国の中央銀行が保有する国債約3兆ユーロ(約400兆円)の「帳消し」を求める動きが出ている。発端は、ベストセラー『21世紀の資本』(みすず書房)の著者トマ・ピケティ氏ら欧州の経済学者約150人が共同で「徳政令」を求める意見書を発表したことだ。

 これに対し、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は「それは私にとって全く考えられないことに思える。今は債務帳消しの質問をするのに適切な時期ではなく、我々は経済の維持に集中している」と否定的な見方を示したと報じられているが、それは当然だ。

 だが実は、巨額債務の問題は、欧州各国とは比較にならないぐらい日本のほうが深刻だ。国債などの残高を合計した「国の借金」は、2020年度末で過去最大の1216兆4634億円に達し、その対GDP(国内総生産)比は230%を超えている。前述した敗戦直前の政府債務の対GDP比は約200%だったが、今はそれを上回る異常な状態になっているのだ。

 ちなみに、政府債務の対GDP比はアメリカ108%、フランス99%、イギリス85%、ドイツ56%である。また、EU(欧州連合)は予算年次ごとの財政赤字を対GDP比で3%以内、債務残高を同60%以内に抑えることを加盟国に求めている。EUの基準であれば、すでに日本は“TKO(テクニカルノックアウト)状態”なのである。

 2020年11月1日時点の日本人の推計人口(約1億2320万人)で単純計算すると、国民1人あたりの借金は約987万円。これは生まれたばかりの赤ちゃんから100歳以上のお年寄りも含めた日本人全員が背負っている借金だ。

 時折、日本が財政破綻する可能性について聞かれるが、私に言わせれば、税金を払える生産年齢人口が減り続けている以上、破綻確率は「100%」である。今の日本は、いわば“裸の王様”のようなもので、すでに国の財政は破綻している状態だから、いつ国債が暴落してデフォルト(債務不履行)になってもおかしくない。ただ、それは1年後かもしれないし、10年後かもしれない、という話なのである。そういう事態が起きないように財政運営戦略を作っていくのが、国を預かる為政者がやるべきことだ。

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