俳優・阿部寛が高校生らを東京大学合格へと導くドラマ『ドラゴン桜』(TBS系)では、東大に行けば“人生が変わる”と、学生たちのやる気に火をつける。たしかに、東大では日本一の教育を受けられる環境が整っているように見える。しかし、東大にもさまざまな課題がある。
その1つが、「多様性」において、海外に後れを取っていること。代表的なのは、男女比の極端な偏りだ。東大の男女比率は長らく男子8割、女子2割と、大きく差がついている。
当然、東大も手をこまねいているわけではない。対策として、女子学生を対象にした住宅補助や女子学生奨学金のほか、2008年度から全部局を対象とした保育園の運営も行っている。こうした女子学生・女性研究者支援のおかげもあってか、2021年度の女子入学者は過去最高の21.1%に到達。しかし、藤井輝夫総長は「まだ足りない」と、女子学生や女性研究者を増員することに意欲的だ。
東大名誉教授の上野千鶴子さんは、東大に女子学生が増えないことについて、外部からのクーリングアウト、つまり“達成欲求や向上心を冷ますような働きかけ”があると指摘する。
「いまだに、“女の子だからそこまで頑張らなくていいよ”とか、“東大に行くと結婚できないよ”といった言葉を投げかける大人がいます。地方では、“娘は県外に出さない”という考えも根強い。男の子なら、無理して仕送りしてでも東大へ、となるのですが、女の子はそうではない、という現実があります」
そもそも、OECD加盟国では、18才以上の高等教育進学率は女性の方が高い。しかしながら、日本ではいまもさまざまな受験現場で、女性差別が行われている。2018年、東京医科大学の医学部医学科の一般入試において、女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を制限していたことが判明し、非難を浴びたことは記憶に新しい。その後、他大学も同様の操作をしていることがわかり、騒然となった。
また、都立高校は、国内で唯一、男女別の定員制を設けている。これにより、男子の合格最低点数より何十点も高い点数を取った女子が現実に不合格になるという憂き目を見ている。上野さんは「推薦枠を増やすべきだ」と提案する。
「現時点で、東大のAO入試(学校推薦型選抜)における女子比率は非常に高い。つまり、推薦枠を拡大すれば、結果的に女子学生比率は高まります。“推薦で入ると、一般入試で正面突破しなかった負い目を卒業まで感じ続ける”という人もいますが、大事なのは、どんな制度で入ったかではなく、その後の伸びしろがどれだけあるか。推薦入学で入った学生ほど入学後の伸びが大きく、周囲にも好影響があるというデータもあります」