学問はノイズから生まれる
単に「女子学生の数を増やす」ということそのものにも、大きな意義があると、上野さんは言う。
「忘れてはならないのは、大前提として、“学問はノイズから生まれる”ということです。東大生を多く輩出しているのは、中高一貫の男子校です。なぜなら、異性というノイズがないので、教師が生徒たちを管理しやすく、受験という目標をクリアしやすいからです。しかし、大学の学問は受験のための勉強とは違います。多くのノイズがなければ、イノベーションは生まれません。女性という異文化は、あらゆる学問分野を活性化するでしょう。
事実、女性研究者は、同じポストに到達した男性研究者より業績が高いというデータもあります。いま、感染症研究の最先端にいる研究者の中にも女性がいます。そういう女性が増えて、メディアで見慣れると、“リケジョ(理系女子)”も当たり前になるでしょう。女子学生や女子院生は、女性研究者の予備軍。そのためにも、トップレベルの大学に女子学生を増やさなければなりません」
日本を牽引する大学から多くの優秀な女性たちが当たり前に輩出されるようになれば、わが国の根深い男女格差が解消される日も近づくだろう。
東大の課題は、男女格差だけではない。学生の親の収入にも格差が存在する。
2018年の東大の「学生生活実態調査」によれば、東大生の親の6割が、「年収950万円以上」。一方で、2019年の国税庁の調査によれば、正規社員の平均給与は503万円。“やはり、東大に通えるのは裕福な家の子だけなのか”と絶望しそうになる。