親が亡くなった後の「遺品整理」が子世代の負担となることが注目を集めている。手間がかかることを踏まえ、近年は整理、処分等を代行する遺品整理サービス業者も増えているが、国民生活センターが「高額な追加料金が発生した」などのトラブルについて注意喚起(2018年7月)するなどの問題も起きている。
そうした負担を懸念した子供たちからすれば、“親が生きているうちに自分で身の回りを片付けてほしい”という話になる。「生前整理」などと呼ばれるが、求められて渋々始めた結果、後悔の念を抱いている人もいる。関東近郊でひとり暮らしの70代男性はこう話す。
「3年ほど前、息子と娘が帰省した時に、“モノが多すぎるから整理しよう”と言われて一緒に片付けを始めたのですが、昔の海外旅行の記念品とか、よく行っていた釣りやゴルフの道具をガラクタ扱いするので“いい加減にしろ!”とケンカになってしまった。結局、本棚の蔵書の大半を処分したのですが、不思議なものでなくなると読み返したくなる。それでいて、息子は保管場所に困った衣類なんかを昔の自分の部屋に置いておこうとするから腹立たしくて……」
生前整理には体力的な負担も伴うし、貴重品や重要書類を誤って捨ててしまうトラブルも起き得る。周りから見れば不要品でも、自身にとっては大切な品物かもしれない。実家片づけ整理協会代表理事・渡部亜矢氏はこう話す。
「整理をするにしても、“まずはトイレへの動線を整理する”といった身近なところから始めるのが望ましく、自分が大事にしているコレクションなどは無理して捨てる必要はありません。実家に子供の荷物が残っているなら、まずはその処分を促すのもいいでしょう。
子供の側の懸念が、コレクション品などの処分方法や費用であることも少なくないので、“自分が死んだらあの人に譲ってほしい”とか、“処分費用の×万円は用意しておく”などと伝えると子供たちも安心するのではないでしょうか」
子供たちに迷惑をかけない死に方をしたい――それは多くの人が思うことかもしれないが、その考えを優先するあまり、自らの人生を悔いの残るものにしてしまっては、元も子もない。
※週刊ポスト2021年7月9日号