長年連れ添った夫婦にとって、配偶者が亡くなった後の生活には、いろいろな不安がつきまとうもの。たとえば、夫に先立たれたときのことを想定して、「いまの家は売って、もう少し狭い部屋を借りておいた方がいいかも」と考える妻もいるだろう。しかし、金融資産はあらかじめ整理してもいいが、家だけは焦って整理しない方がいいのだという。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんが指摘する。
「家の価値は入居した直後から年々下がるので、よほどの物件でなければ思うような値段では売れず、30代の頃に建てた家なら、土地代にしかならない場合も多い。何より、売れたところで、残された単身高齢者のあなたは賃貸物件を借りづらくなります。60才以上の単身女性だと、収入が不安定になりがちで家賃未払いのおそれがあるとみなされます。そのうえ、もし未払いが続いても退去要請がしづらいため、拒否感を覚える大家さんもいます」
つまり、大したお金にならない家を売るくらいなら、そのまま住み続けたほうがいいことも多いというわけだ。
家の名義の変更も、夫の生前に慌ててやる必要はない。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の井戸美枝さんが話す。
「夫が生きているときに名義を変えるのは贈与とみなされ、贈与税が高くつく可能性があります。また、印紙代などで手数料が1万円以上かかる。名義変更はさほど難しい手続きではないので、夫が亡くなってからでも遅くはありません」