ブラック企業の“仕事”を無給で請け負っていた感覚
IT企業に勤める20代の男性・Bさんは、複数のスマホゲームを掛け持ちしていた。仕事用の手帳とは別に、掛け持ちするスマホゲームのイベントスケジュールを記載する手帳を用意して“進行管理”していたそうだ。
「もはや仕事の一部みたいな感じでした。最大で5つぐらいまでが限界でしたが、スマホ3台体制でプレイしていました。各ゲームに課金する予算管理をはじめ、目標達成ラインも明確に決めていましたね。例えば今回このゲームでは1万円くらい、イベントは何位以内で報酬獲得を目標という具合です。複数ゲームでイベントが重なり、睡眠不足になることもありましたが、それ以上に、毎朝起きたら各ゲームにログインして、それぞれ周回してスタミナ消費という朝の日課がきつかったです」(Bさん)
そんなBさんが最も悩まされたのが、ゲーム仲間との約束だった。ゲームによっては、プレイヤーがチームを組み、他のチームと対戦したり、敵を倒したりするコンテンツが存在する。Bさんは仲間との「週7日、かつ時間指定」という拘束に苦しんだ。
「社会人なのに週7拘束はきつすぎます。しかも戦力を上げ続けないと他のメンバーに迷惑がかかる。メンバーたちと戦力差が出てきたら引退というプレッシャーもありました。さらにオートではなく手動でプレイしてくれという。僕は女の子キャラ同士がイチャイチャしているのを見るだけで十分だったのに……」(Bさん)
この拘束を機に、人とのコミュニケーションの大切さに気付かされたというBさん。スマホゲームをプレイすることを理由に、同僚や友人との交流を断ることが増えていたことに気づき、ゲーム自体をやめようと思い立ったという。
「コロナ禍で在宅勤務になり、そもそもコミュニケーションの機会が減ったのに、ゲームばかりしていると、リアルの友人がどんどん離れていくのでは、と怖くなりました。もちろん、ゲームで息抜きできるのは楽しい面もあるのですが、一旦、ゲームそのものをすべてやめることにしました。思えば、自らブラック企業の“仕事”を無給で請け負っていた感覚でした……。今は時間が余った分、資格の勉強をしたり、リアルの友人との交流を大切にしています」(Bさん)
始まりがあれば終わりがあるように、出会いがあればまた、別れもある。コロナ禍でスマホゲームの楽しさに出会った人もいれば、別れを告げた人たちもいる。長年プレイし続けてきたゲームから卒業する時は、どんな思いがあふれるのだろうか──。