コロナ禍で海外へ行くのはなかなか難しい状況が続いているが、夏休みを利用して、海外に行きたかった学生・生徒たちは多いはず。近年は、カリキュラムに海外でのホームステイを組み込む高校や、留学を必修化する大学もあるが、訪れた場所を好きになるのと、かぶれてしまうのは別だ。神奈川県に住むTさん(20代/男性)は、見事にアメリカにかぶれたことで、友人から総スカンを喰らってしまったという。どういうことなのか、そのエピソードを振り返る。
Tさんがホームステイでアメリカ・フィラデルフィアに行ったのは、高校1年生の時のこと。Tさんが通う高校では、高1の夏休みにアメリカに海外研修旅行に行く選択プログラムが用意されていた。Tさんはそれまで海外旅行経験はゼロで、部活はパソコン部、趣味はゲームと漫画という、ごく普通の高校生。しかし1か月のホームステイから帰国すると、Tさんの様相は一変していた。Tさんをよく知る友人のAさんはいう。
「Tは、行く前は『面倒くさい』『アメリカなんて……』とブツブツ言っていましたが、帰ってくると別人に変身していました。以前は安物の運動靴、ヨレヨレのジーパン、チェックのシャツが定番で、ファッションにはまるで無頓着だったのに、NBAのチームのユニフォームにひざ丈のパンツ、原色のバスケットシューズ、腕や首にはジャラジャラとアクセサリーといったファッションに突然変身したんです」(Aさん。以下同)
Tさんのホームステイ先には同年代の男の子がいて、一緒にバスケットボールをやったりスケボーをやったりする内に、ものの見事にアメリカ文化に惚れ込んでしまったのだ。帰国後、Tさんの話題はメジャーリーグやNBAばかりになり、音楽の好みもグループアイドルからラップに。香水らしきものも付けるようになり、周囲にプンプンと良い匂いを振りまくようになったという。
「ホームステイの参加メンバーはもれなくアメリカにかぶれてしまい、顔を合わせる度に“グータッチ”のような挨拶をしていて、現地で呼ばれていた外国人風の名前で呼び合っていました。Tと休日に会うと、パーカーのフードを被り、曇りの日でもサングラスを掛けていて、周囲の人からジロジロ見られることもありましたが、本人はどこ吹く風の様子でした」