大阪・門真を拠点に活動する医師・辻川覚志氏(つじかわ耳鼻咽喉科院長)が、自身の診療所を訪れるなどした地域の60歳以上の男女1067人に健康意識や生活満足度に関するアンケート調査を行なった。その結果、60代から90代までのすべての年代において「独居」の人の生活満足度は、家族と「同居」する人のそれよりも高かった。
こうした結果が出たのはなぜか。調査を行なった辻川氏は「やはり、生活の自由度が高いという要因が大きいのではないか」と解説する。
「ひとりで」の生活の満足度をより上げるためには工夫も必要だと辻川氏は指摘する。
「ひとつは毎日、“新しいこと”に頭を使うことです。いくら複雑なことをやっていても、人間の脳はよくできているので、同じことを繰り返していると頭を使っていないのと同じになる。それが続くと認知症につながるので、毎日に変化がつけられるように心懸けたい。また、前提として食事の準備など、自立して生活できる能力が重要になります」
女性の平均寿命のほうが長いこともあってか、少なからぬ男性が「夫婦で先に逝くのは自分」と考えがちだが、そうとは限らない。65歳以上のひとり暮らしの世帯は女性が約400万人に対して、男性も約192万人を数える(令和3年版『高齢社会白書』)。
辻川氏は「これだけ長生きになってきたのだから、男性も最後はひとりになる覚悟と準備をしておいたほうがいいでしょう」と強調する。
つまり、「夫婦で」暮らしている時から、「ひとりで」の生活を想定するのが望ましいということだ。実は、それが夫婦ふたりでの生活を充実させることにもつながる。前述の辻川氏の調査によれば、独居などに比べて2人世帯の生活満足度は低い。
「ひとり暮らしの自由度が高いのに対して、夫婦2人の世帯は様々な面で制約があることが原因でしょう。夫も妻も、それぞれが自立して、自由に振る舞えることが、生活満足度向上のために重要です。とりわけ、夫が妻への依存度を下げることが問題の解決につながることが多い」(辻川氏)
夫の定年退職などで、夫婦で一緒に過ごす時間が増えたことが家庭不和の原因になることは少なくない。