プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険が、60才を迎える男女2000人を対象に2019年4月時点の貯蓄額を調査したところ、60才で貯金が100万円未満の人は24.7%という結果が出ている。どのような経緯で高齢者が「貯金ゼロ」に陥るのだろうか。そのリアルな生活実態と、そこから抜け出す方法に迫った。
78才の七子さん(仮名)は、収入は年金のみで、同居する引きこもりの長男(53才)を養っていたものの、その長男が脳梗塞で倒れてしまい、治療費は150万円を請求されることとなる。そこで、生活保護を申請したが審査に通らなかったという。
60代のとき、七子さんには大企業に勤めていた夫の退職金が約3000万円ほどあった。いまの収入も、14年前に死別した夫の遺族厚生年金と老齢基礎年金を合わせて月18万4409円あり、5年前までは貯金もあったという。それがなぜ、このような状況に陥ったのか。
「夫が退職後、いろいろな業者から家のリフォームをすすめられたんです。彼らの話を聞いているうちに、老後を考えてやった方がいいのかと思い、退職金をつぎ込みました」(A子さん)
ところがそのリフォームは欠陥工事で、雨漏りがするなどの問題が。仕方なく、その家を売ってマンションを購入。その後、夫が亡くなり、もらえる年金が減ったにもかかわらず、生活のダウンサイジングができず、生活費を貯金で補填する日々が続いた。
さらに、引きこもりの長男を養い続けてきたこともネックとなった。貯金が尽きてからは、長女(55才・既婚)や友人からの援助で生活を続けてきたという。
「七子さんのように、貯金ゼロの生活をしている高齢者は珍しくありません」
とは、認定NPO法人理事でソーシャルワーカー(社会福祉士)の藤田孝典さんだ。
「このようなケースに陥るのは、若い頃からパートや派遣といった非正規雇用で働いてきた人たちが最も多い。低所得なので、毎月の収入は生活費で消え、若い頃から貯金をする余裕がなく、そのまま老後に突入してしまうのです」(藤田さん)
また、七子さんのように、収入や貯金があったとしても、引きこもりの子供や、非正規雇用の子供、離婚して子連れで戻ってきた子供など、経済的に独り立ちできないわが子を養い続けることで、貯金が底を尽き、親子で共倒れとなるケースも増えているという。