引っ越しはかなりの重労働。物件探しに始まり、荷物をまとめて搬送・搬入。契約時には敷金や礼金を支払わなければならないし、引っ越し代と合わせて金銭面の負担も馬鹿にならない。他にも住民票の手続きや公共料金支払いの住所変更など、煩雑な手続きには事欠かない。なるべくなら引っ越しをしたくないと考える人は少なくないだろうが、中には自発的に引っ越しを繰り返す人たちもいる。そんな彼ら/彼女たちの事情を聞いた。
メーカーに勤める30代男性・Aさんは、大学卒業後に就職してから一人暮らし開始。約10年の間に7回の引っ越しを繰り返してきた。なぜそんなことになったのか。
「神経質な性格のせいなのか、引っ越す度に物件の欠点が気になってしまうんです。平均すると1年ちょっとくらいで引っ越しています。正直、自分でも落ち着きたいです」
Aさんが気になる物件の欠点には2タイプあるという。引っ越し前に想定できたが、我慢できると思い妥協したものと、想定外のことに見舞われて我慢できなかったものだ。
「“物件選択センス”がないんですかね。例えば、駅まで徒歩10分なら許容できると思ったら、坂道が想像以上に急で、通勤や買い物が苦痛で1年で引っ越し。次はマンションが高速道路沿いで騒音が激しくて4か月で引っ越し。費用節約のために家賃の安いアパートに引っ越したら、築年数が古いせいか配管からの臭いがきつくて引っ越し……。
今の物件は住人がうるさい。左隣は人の出入りが激しい人、右隣は通話なのか配信者なのかわかりませんが一人で騒がしい人。上は足音が響きます。今度は最上階の角部屋の物件にしたいと思っています」(Aさん)
引っ越しを繰り返すことで貯金できなくなり「引っ越し貧乏になっている」と言うAさんだが、デメリットだけでなくメリットもあるという。
「引っ越しを繰り返すうちに、次の引っ越しを想定して、モノを貯めこまない性格になりました。家電も家具も服も、『いらない』と判断したら、すぐに売ってお金に換えます。部屋は常にスッキリしています」(Aさん)