引っ越しは「リセット」であり「リスタート」
引っ越しを「趣味」として捉える人もいる。IT企業に勤める30代女性・Bさんは、引っ越しは約15年で10回と、かなりの頻度で繰り返している。前出のAさんと違って、不満があるから引っ越ししているというより、「もはや趣味」だという。
「引っ越し直後から次の物件探しをし始めてしまいます(笑い)。間取りを見るのがもはや趣味なんですよね。『そんなに引っ越しすると、お金かかるでしょ?』とよく聞かれますが、私は物欲があまりないタイプなので、引っ越し以外にお金はほとんど使いません。例えば、1年で引っ越ししても費用は30万くらいで、月に約2万~3万円くらいの趣味と考えればいいかなと。手続き関係だって慣れればラクなもの。全然大変だとは思いません」(Bさん)
そんなBさんは、趣味としての引っ越しの魅力をこう語る。
「新しい街を探索して、徐々に馴染んでいく感覚がワクワクします。部屋の中の配置を考えて、段々と居心地の良い空間にしていく過程も楽しい。そうやって親しんだ住まいは離れがたい側面もあるのですが、やっぱりまた新しい体験を求めてしまう。自分が選んだ土地だからこそ価値があります」(Bさん)
引っ越しは「心機一転」の意味合いがある──そう自身の“引っ越し観”を語るのは、人材系企業に勤務する20代女性・Cさんだ。「リセット」であり「リスタート」だと言う。
「つらいことがあったり、新たな決心をした時、引っ越しすることが多いです。例えば、彼氏と別れたら、その部屋に詰まった思い出も全部振り払いたいのですぐに引っ越しします。付き合って半年で別れた時はさすがに迷いましたが、それでも引っ越ししたことをよく覚えています。引っ越しは私にとって、リセットして次に進む時の決意表明みたいな感じ。定期的なデトックスのようなものですかね」(Cさん)
自発的に引っ越しを繰り返す人たちには、それぞれの事情や価値観があるようだ。