人生100年時代のいま、65才は「折り返し地点」に過ぎない。翻っていえば、この時期をどう過ごすかによって後の人生の豊かさが変わってくる。65才を超えて、芸能界で精力的に活動する女優の渡辺えり(66)は、このターニングポイントをどう見つめているのか、話を聞いた。
「つい先日、ちょっとショックなことがあって──」
そう語り始めた渡辺。聞けば、新型コロナのワクチン接種会場でのことだという。
「さあ、これから打とうというときに、お医者さんから『お名前を、はっきり、大きな声で、言ってください。1回目、ですよね?』と、それはゆっくりした口調で、まるで諭すように言われてしまいました」(渡辺・以下同)
今年で66才。確かに世界保健機関(WHO)の定義では“65才から高齢者”だが、見た目はまだ中年の域。当の本人は、実年齢を思い知らされたと苦笑いする。
「ワクチン接種のための高齢者向けマニュアルがあるのでしょうね。“ああ、お年寄りってこういう扱いなんだ!”と思いました」
高校時代に見た戯曲『ガラスの動物園』に衝撃を受け、卒業後、舞台芸術学院に入学。23才の若さで劇団を旗揚げしてからは、女優のみならず、劇作家、演出家としても活躍する。自らの強い意志で芝居一筋の人生を突き進んできたように見えるが、最も後悔しているのは、意外にも「子供を持たなかったこと」だという。
「実は20代のときに結婚したいと思う人ができて、私は仕事を辞めるつもりでいたんです。でも、父親に反対されて、結局、諦めました。当時はまだ、女性が子育てと仕事を両立させるのも難しくて、私は芝居を選んだわけですが、まさに後悔先に立たず。
後年、養子をもらうことも考えたのですが、調べてみるともろもろ厳しい制限もあり、断念せざるを得ませんでした。いまだに子供がいる夢を見ることがあるほど、心の底から後悔しています」
1995年に13才年下の舞台俳優と結婚。23年連れ添ったが、2019年に離婚してからは、終の住処として購入したマンションに愛猫1匹と暮らす。そんな2度目の独身生活を彩るのは、「ジュリー」こと沢田研二(73才)の存在だ。