「子供のときから大ファンでしたが、離婚する少し前からその熱が再燃しちゃって。毎晩、YouTubeでジュリーの動画を見るようになり、“気がついたら朝4時”なんてことも。Facebookにあるファンの集いのページにも登録していて、ジュリーの誕生日には、みんながそこにお祝いの言葉を書き込みます。結婚してようが独身だろうが、6月25日はファン全員が『おめでとう!』と言い合うんです。
寂しいときに、パソコンを開いたりテレビをつけたりすればいつでも会えるスターの存在は、女性にとって大切だと思うんです。憧れの人がいるだけで、気持ちがウキウキ、華やかになれますから」
月に1度は両親に会いに行く
65才までに経験してよかったと思うのは、仕事で世界各地を訪れたことだと渡辺は語る。現地で受けた刺激は、何物にも代えがたい宝物だ。
「2008年に訪れたルーマニアには、私が生まれた昭和30年当時の日本とまるで同じ風景がありました。農家の荷車に乗せてもらい、放牧された牛や羊を眺めていたことを覚えています。現地の人の優しさに触れて、真っ赤な夕焼けを見たら、もう涙が止まらなくなってしまって……。
一方で、フランスではオルセー美術館の絵画の、本で見るのとは違う迫力に圧倒されました。いずれ体力的に飛行機に乗ることが難しくなるでしょうから、行けるうちに行っておいてよかったです」
海外渡航が難しいコロナ禍では、地元で暮らす90代の両親のことを考える時間も増えた。月に1度は、山形に戻って実家で暮らす父親と介護施設にいる母親に会いに行く。
「両親とも認知症で、私も高齢者です。老いを感じるけれど、自然現象だからそれでいい。いまの時代、いつまでも若々しくいることに重きを置く人も多いけれど、それは自分を苦しめるだけ。老いを受け入れながら、人生を楽しむ方がいい」
そんな渡辺が理想とするのは、地元・山形で働く農家の女性たちだ。
「皆さん80代で腰は曲がっているけれど、一緒にお風呂に入ったら、すごく筋肉質なんです。早起きして農作業をして、体を鍛えているからこそなんでしょう。それに、“おいしいものを食べさせたい”と、人のために働いているからだと思うんです。人間は、自分だけのためには生きられないもの」
渡辺も演劇で人を笑顔にしたいという思いを持ち続けている。コロナ禍で舞台を取り巻く状況が厳しいいまも、精力的に活動する。パワフルでいられる秘訣は何なのか。
「健康のために何かやろうと思ったことは、一度もないんです。人生すべてを芝居に捧げていますから、体を鍛えるのも、芝居のため。劇場に行くと、ここが私の居場所だと思えて安心します」