葬儀や墓のスタイルが多様化している昨今、どう選べばいいか分からないという人もいるだろう。よく理解しないまま契約すると、後々遺族に負担を強いることにもなりかねない。父親が生前に墓支度をした女性の実体験から、勘違いしやすい墓の裏事情を学ぶ。
墓を継ぐ人がいなくても「永代供養」のシステムを活用すれば墓が持てる。これは、契約した墓地の管理者が一定の期間、遺骨を管理、供養してくれるというもの。お墓コンサルタントの大橋理宏さんが話す。
「“永代”という字面から、一度契約して料金を払えば、永遠に管理してもらえると思う人が多いのですが、実際は違います」
千葉県在住の主婦Tさん(62才)も、永代供養の意味を勘違いしていた1人だ。Tさんの父は次男だったため、実家の墓に入れてもらえず、自分の墓を持つのが人生最後の夢だったという。
「娘の私たちは嫁いでいるから、父が新たに建てた墓には入れないし、管理も大変だから、建ててほしくなかったのですが、父が“永代供養にする、お前たちに迷惑はかけない”と言うので渋々承諾したんです」(Tさん)
しかも、手続きや支払いもすべて、生前に父親が済ませたという。それならば……ということだったのだが、それから17年後に事件は起きた。父の墓がある寺から、「永代使用の契約期限が切れるので延長するかどうかを決めてほしい」との連絡が。延長する場合、管理使用料を払わなければならない。延長しなければ、父の遺骨は合葬されるということだった。
「やられたと思いました。父は雑なところがある人だったので、使用期限があることを聞き逃していたのかもしれませんし、理解したうえでの計画犯かもしれません。いずれにせよ、1年間だけ更新し、管理使用料1万円を払うことに。その間に今後をどうするか、考えることにしました」(Tさん)