相手の名前を会話に入れる
また、初対面の人とのオンラインでのやりとりにおいて一番難しいとされるのが「雑談」だ。せっかく対面時に場を和ませても、開始早々から「本日はよろしくお願いします。早速ですが、こちらが本日ご紹介するサービスのパンフレットです。では、ご説明をさせていただきます」などと本題に入るのは、相手に失礼になることもある上に、ただでさえ距離がある画面越しの会話がさらに遠くなってしまう。
そこで、初対面の挨拶で少し場を和ませたところで実践して欲しいのが、「会えた喜び」を伝えること。
「初めまして。〇〇さん、お時間をいただきありがとうございます。本日のミーティング、とても待ち遠しかったです!」
この時、相手の名前を会話に入れるのがポイント。こんな風に「会えた喜び」を表現するだけで、「私はあなたにとても興味がある」という意思を相手に伝えることができるのだ。この一言があった後と無かった後の「本題」では、その後の会議の進み具合は大きく変わってくるだろう。
最後に気を付けたいのが、会議の終わり方だ。挨拶~導入~本題と進み、こちらが打ち合わせたい内容については全て話し終わったという時、目的を達成してつい気が緩んでしまっている場合が多い。そんな時によく見られる失敗例が、なんとなく「以上になります。ではどうも、ありがとうございました」などと言い、退出してしまうケース。対面の場合なら、会議室やフロア、エレベーター前などで挨拶を交わし、お辞儀をするという流れがあり、双方にしっかりと会議終了の認識が得られるが、オンラインの場合はこれが無いため、何も意識せずに挑むと、このようになりがちなのだ。
そのため、オンライン会議では最後の「終わりの挨拶」をしっかりと行うことが重要。複数人いる会議の場合はなおさらで、きちんと主導権を握るファシリテーター的な人が「では本日の打ち合わせはここまでとなります。何かご質問などありましたらお願いいたします。無いようでしたらこちらで終了となります。ありがとうございました」と、会議を終了する認識を参加者全員に持たせることが大切だ。
また、「今日はお時間をいただき、ありがとうございました。○○さんと画面越しではありますが、お会いでき、お話しできてプロジェクトも円滑に進められそうです」などの気持ちのこもった言葉を会議の終わりに話すのも有効だ。
オンラインでは対面よりも感情が伝わりにくいため、「対面の3割増し」の表現力を発揮する必要がある。コツとしては、Web カメラの向こう、4~5メートル先に声を山なりに放つように喋ること。そうすると、画面越しの相手にとっては伝わりやすい、自然な抑揚が付くようになる。
実際、アナウンサーはスタジオのカメラに向かって、遠くに声を放つように喋っている。そうすることで、視聴者に話しかけているように受け取ってもらえるのだ。なぜか相手に伝わりにくい、コミュニケーションが上手くいかない、一本調子を改善したいという人は、お腹に少し力を入れて声を届けるように話してみて欲しい。
【プロフィール】
阿隅和美 (あすみ・かずみ)/WACHIKAコミュニケーションズ代表。青山学院大学経営学部卒業。中部日本放送アナウンサーを経て、NHK衛星放送キャスターとして、株式市況、世界のトップニュースを10年間担当。20年にわたり、スポーツ、経済、情報番組に関わる。アナウンサー名は瓶子和美。現在は、培った技術を活かし、ビジネスの現場でコミュニケーション力を発揮し、成果を出す人材を育成する研修、講座、講演を行っているほか、経営層・管理職、エグゼクティブリーダー向けにプレゼン・スピーチのパーソナルトレーニングやコンサルティングなどを実施。著書に『心をつかみ思わず聴きたくなる話のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仕事ができる人の話し方』(青春出版社)があり台湾でも翻訳されている。