教育アプリに可能性を見出す企業も
教育をビジネスにしたい企業は、時には利益最大化のために、両親の焦りに付け込み、教材費、授業料を吊り上げ、学生獲得競争を繰り広げることで学歴偏重社会を助長させてしまう。受験テクニックの詰め込みばかりを行うことで国家が必要とする人材とは違う人材ばかりを育ててしまう。しかし、それは一面に過ぎないのではないか。教育政策の意図を汲み取り、それに沿ったビジネスを展開しようとするベンチャー企業も数多く存在する。
現在、そうした企業が最も注目している分野の一つとして、子供向けシステム開発教育が挙げられる。
たとえば、深セン点猫科技は、7~16歳の学生向けに図形を用いて直感的にPython、C++などのプログラミング言語を学べるアプリを提供している。そのほか、7~8歳児を対象としたゲーム化したアプリ、8~12歳児を対象としたAIを用いたアプリなども提供している。スマホやタブレットで遊びながら、コンピューターの仕組み、プログラミング言語から論理的な思考、創造性に至るまで幅広い素養を獲得できるような製品を提供しようとしている。
中国経済の欧米へのキャッチアップはとっくに終わっている。イノベーションを主力エンジンとして経済発展を続けたい中国にとって、こうしたアプリは“うってつけ”のものであるだろう。スマホゲームへの依存が批判される中で、学習ゲームは今後、爆発的に成長する可能性がありそうだ。
洋の東西を問わず、語学力はその人に深い知識、高い論理的な思考能力などが備わっていて初めて役に立つ。“中身”あっての語学力だ。
これは日本でも言えることだが、若い人にはまず、母国語、論理的な思考能力、一般教養全般を身に着けることに専念してもらうべきではなかろうか。少なくとも母国語も完全ではない小学生に英語の試験を義務付ける必要はないと思うがどうだろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。