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世界を目指した孫正義氏にとって「コンパス」だったスティーブ・ジョブズ

三木谷浩史氏と孫正義氏のこれまでの歩み

三木谷浩史氏と孫正義氏のこれまでの歩み

 その効果は早くも2年後に現れる。ジフ・デービスの情報網に引っかかった「面白そうな会社」。それが米国のYahoo!だ。孫はその可能性をひと目で見抜いた。スタンフォードの学生が立ち上げた創業半年、社員6人のベンチャーに孫は自ら足を運び、「まだ小さな会社だからそんな大金はいらない」という創業者のジェリー・ヤンに「あって困るものではないからとっておけ」と2億円を出資し、Yahoo!の株式の5%を取得した。

 孫は同じやり方でアリババを見つけ出し、2000年にこの会社にも出資する。Yahoo!とアリババはその後、大化けし、孫が出資した金は数千倍になって返ってきた。この資金が現在のソフトバンクグループの「動力源」になっていることを考えると、ジフ・デービス展示部門の買収がいかに慧眼だったかが分かる。

 ジフ・デービスと並ぶ「孫のコンパス」がアップルの創業者、スティーブ・ジョブズだ。2006年のある日、孫はジョブズに会うため、シリコンバレーにあるアップルの本社を訪れた。

 孫はカバンの中から手書きの図面を出した。

「あんたのところの『iPod(携帯音楽端末)』にマックOS(アップル製パソコンの基本ソフト)を載せて、通信機能を持たせたら、モバイル・インターネットができるはずだ。スティーブ、これを作ってくれよ」

 ジョブズは言った。

「マサ、そんな汚らしいものを俺に見せるんじゃないよ」
 だがジョブズの目は笑っている。孫はハッとした。
「もう作ってるのか?」
 ジョブズはニヤニヤしたまま、何も話さない。
「作ったんだな。じゃあ、独占販売権を俺にくれ!」
 ジョブズは呆れ顔で言った。
「お前の会社はまだ携帯電話の免許を持ってないだろ?」
 孫は言った。
「分かった。携帯のライセンスを取ったら、そいつの販売権をくれ。約束だぞ」

 その2週間後、孫は英携帯電話大手ボーダフォンの日本法人を1兆7500億円で買収してしまう。買収を発表した後、孫は再びジョブズに会いにいく。

「どうだ、ライセンスを取ったぞ」
「分かってる。俺は約束は守る男だ」
「試作機を見せてくれ」
「それはできない。でもマサ、あれを見たらお前、パンツにお漏らしするぞ」

 2008年、ソフトバンクは「iPhone(3G)」の日本における独占販売を開始する。iPhoneの威力は絶大で、NTTドコモ、KDDIとの差はみるみる埋まっていった。

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