──昨年、「80歳まで働ける雇用制度」を打ち出して話題になりました。
野島:以前、当社を60歳で退任した常務のケースがきっかけでした。ある時、新店を出したばかりで繁忙だった折に、「新しい店を少し手伝ってもらえないだろうか」と彼に頼んでみたんです。当初は「もうリタイアした身だから」と断わられたのですが、「1日だけでいいから」と懇願したら来てくれた。
で、2週間ほど経つと今度は彼から、「売り場がこんなに楽しいとは思わなかった。週2日でも3日でもいいから働かせてほしい」という電話をもらったんです。結局、彼は75歳まで仕事をしてくれました。
フルタイムでなくパートタイムでもいいし、当社には予算達成のノルマもないですから、愛社心だけ持ってお客様に接してもらえばいい。在職中はバリバリ働いていた人が、退職して数年もすると目標喪失で途端に老け込んだり、体調を崩すケースがあるじゃないですか。生き甲斐の提供だけでなく健康長寿にも資することですので、全社的に80歳まで働ける制度を打ち出してみたのです。
会社はお客様と従業員のためにある──その考え方は、今後も当社の成長の原動力であり続けると思います。
【プロフィール】
野島廣司(のじま・ひろし)/1951年、神奈川県生まれ。中央大学商学部卒業後、1973年に野島電気商会(1991年より「ノジマ」に商号変更)入社。1978年に取締役、1991年に専務、1994年に社長就任。
【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号