2020年の倒産件数が過去最多を記録したラーメン業界。コロナ禍で多くの店が経営難に陥るなか、昭和からずっとある「赤看板」の老舗チェーン「ラーメンショップ」(通称「ラーショ」)が人気を集めている。
コロナ禍でも固定ファンをキープする要因は、“東京豚骨”と呼ばれるこってり系の豚骨醤油ラーメンの味もさることながら、朝早くからオープンし、駐車場の広いロードサイドに立地している店が多いため、トラックドライバーや建設作業員などに長年のファンが多いことなどが挙げられる。
ネットやSNSでもラーメンショップに関する投稿が増えており、2019年末にフェイスブックを開設した「ラーメンショップ同好会」では、会員数が急増。ユーチューブのグルメ系動画でもラーメンショップはもはや「定番」。インスタグラムにも昨年2月に「ラーショ部」なるファン・コミュニティができている。
驚くほど緩いフランチャイズ形態
フランチャイズの本部となっているのは「椿食堂管理有限会社」。さっそく電話してみたが、「取材には応じていません」と断わられてしまった。『東京ラーメン系譜学』(辰巳出版刊)の著書があるフードライターの刈部山本氏がいう。
「創業以来、取材拒否の方針を貫いています。本部がメディアに出たことは一度もありません」
そこで『週刊ポスト』は都内の人気店舗・堀切店(葛飾区)に取材を申し込んだ。
「本部に断わられた? まあそうだろうねえ。取材拒否は何かこだわりがあるというより、各店舗で統一した営業ルールなんてないから、特別答えることもないんじゃないかな」
そう言って苦笑いする店主の話を聞いていくと、ラーメンショップの「驚くほど緩い」フランチャイズ形態が明らかになってきた。
「フランチャイズ店といっても、売り上げの何%といったロイヤリティはなく、仕入れる材料費のなかに含まれているだけ。月々の報告みたいなものも一切ありません。本部と連絡を取るのは、仕入れの電話注文のときだけですよ。材料にしても本部から『これを使って』と言われたことは一度もないですね。
基本の醤油だれと味噌だれ、それと辛みの効いた調味料の『クマノテ』。これを外したらラーメンショップの味にならないから、そこはちゃんと仕入れているけど、あとは独自に工夫してやっている。ウチは麺もオリジナルのものを使っています」(店主)