相続の際に遺族が登記手続きをせず、登記上で誰が持ち主なのか確認できない“所有者不明の土地”が増え、空き家の倒壊リスクが生じていることなどを受け、2021年4月28日に不動産登記法が改正された。司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏が説明する。
「全国で放置された土地の総面積は、今後、北海道に匹敵すると言われるほど。法改正により、これまでのように“相続登記は義務じゃないから放っておこう”という考え方は通用しなくなりました。相続で所有権の取得を知ってから3年以内に所有権移転登記を行なわないと、10万円以下の過料が科せられます」
過料は行政罰で、刑事罰である罰金とは別だが、義務を怠ると“罰”があるわけだ。
この改正不動産登記法は2024年を目処に施行される予定だが、野谷氏は「施行前に相続した不動産でも、登記が義務づけられる対象になるので注意が必要」だと指摘する。
夢相続代表で相続実務士の曽根惠子氏も言う。
「これまで相続登記をしていなかった人は、遺産が少なくて相続税の申告をしなくてもいい人が大半でしたが、その人たちも対象になります」
どういった人がトラブルに直面するのか。
「先祖代々の土地を守ってきた人のなかには、これまで名義変更したことがなく、名義人は江戸時代生まれの先祖のままというケースも存在します。そうした場合、相続権を持つ人が何十人にも膨らんでいる可能性があり、全員の合意のもとに名義変更するのに膨大な手間がかかります」(野谷氏)
また、新たに不動産を相続する場合も、相続人同士がなかなか合意に至らず、遺産分割協議が数年に及ぶケースがある。そうした場合でも、「3年以内」に相続登記をしなくてはならなくなる。
「遺産分割協議がまとまっていない場合、相続人の誰か一人が代表して『相続人全員共有の法定相続登記』をすることも可能です。
しかし、代表者は他の相続人の分の登記費用を負担しなければならなくなるし、その後に遺産分割協議が成立した場合の登記の修正も必要になる。手間もお金も余計にかかってしまいます」(野谷氏)