こうした替え玉受検の問題を重くみたのか、東京大学は7月30日にホームページ上で〈【注意喚起】本学学生を名乗るwebテスト代行について〉という文章を掲載。「仮に本学学生が当該行為に加担している事実を確認した場合は、大学として所要の対応をいたします」と警告している。京都大学も8月11日に同様に警告を発出している。
Bさんの話によると、代行業者の中には大手広告代理店や総合商社、外資系メーカーなど名だたる企業の内定実績をアピールするものもあるという。就活がなかなかうまくいかなかったBさんは、「思わずそうした業者の中の1つに依頼してみようかと真剣に悩んだこともある」と明かす。しかしBさんは、結局踏みとどまった。その経緯と理由をこう語る。
「面接にさえ進めば、受かる自信はありました。企業研究、OB訪問、インターンもしっかりしてきたので。でも、数学が苦手だったので、確実に面接に進む“保険”として代行業者に依頼しようかと悩んだんです。でも、仮にそんなことで会社に入っても嬉しくないし、ずっと後ろめたいままなのではないかと思い直し、やめました」(Bさん)
「仮に受かって、実力以上の仕事任されたらどうするの?」
替え玉受検は新卒だけの問題ではない。自分で「Fラン卒です」という都内在住の20代女性・Cさん(小売業)は転職を考えていた時、大手企業に勤める友人に代行を頼めないか頭をよぎったことという。理由は社会人特有の事情からだった。
「働きながらだと、テスト対策をする時間がなかなか取れません。むしろ、勉強するなら面接対策にあてたい気持ちでした。転職者用のテストは、ほとんどの場合“言語”と“非言語”の分野に分かれていて、言語は語句の用法や分の並び替えなど。非言語は割合の速度の計算、集合などが出題されます。友人からは中学受験の内容に近いと聞きました。私は公立小・中・高校だったし、しばらくなんの勉強もしていないこともあり苦痛でした。しかも、表の読み取りや暗号や図形・パズル問題などもあるので、もう無理だと泣きそうだったんです」(Cさん)
しかし結局Cさんも、友人には頼まなかった。友人に「別にいいけどさあ、私が受けたテストがうっかりCの力以上の結果で、入社後にCがすんごい大変な仕事を任されちゃったらどうするの?」と冗談交じりながら素朴な疑問を呈されたことで、目が覚めたという。