遺言書がないと相続人同士での遺産分割協議が必要になり、もめごとになりやすい。協議がまとまらないと家庭裁判所で調停などとなり、“争続”に発展するリスクがある。
「遺言書は故人の遺思を示せるほぼ唯一の方法なので、自分や家族のために、必ず準備したい」と司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏は言う。
自筆の遺言書を作成した場合も、昨年7月から法務局に預けられるようになり、紛失リスクがなくなった。
相続税の申告・納付は死後10か月以内にやらなくてはならない。遺言書がない場合は遺産分割協議を行ない、遺産分割協議書を作る必要があるなど面倒が増す。
「10か月以内に遺産分割協議がまとまらなければ、財産の半分または1億6000万円までの相続が非課税となる『配偶者特例』や不動産の『小規模宅地等の特例』が使えなくなり、相続税額が増えてデメリットばかりです」(曽根氏)
相続財産のなかでも特に注意が必要なのが、不動産だ。トラブルの火種になりやすいうえに、新しいルールも加わる。
2021年4月に不動産の名義変更・登記を義務化する改正法が成立した(2024年を目処に施行予定)。背景には、所有者不明の空き家が増え倒壊リスクが高まったことなどがあり、そのため「相続を知ってから3年以内に行なわないと10万円以下の過料が科せられる」(野谷氏)ので注意したい。
「特に先祖代々継いできた土地などは名義変更されないままで、いざ相続登記しようとすると相続人が数十人に及ぶなど複雑化している可能性があります。相続人の調査に加え、協力を取り付けることも非常に困難が予想されるので、早めに名義を確認しておく必要があります」(野谷氏)
※週刊ポスト2021年9月10日号