チップもないのにコップの水を注いでくれる
こうした日本の食事について、「質がいい」と太鼓判を押すのは、海外でも活躍する日本人アスリートだ。ロンドン五輪フェンシング男子団体(フルーレ)の銀メダリストである三宅諒さん(30才)が語る。
「アスリート目線で見ても、日本の食事のクオリティーの高さはつねに感じます。海外の地方都市などへ遠征したときには、場合によっては、マクドナルドなどのファストフードしか選択肢がないこともある。試合前に体調を崩さないよう、調理法がよくわからないものは口にできないからです。海外では氷1つ口に含むのも細心の注意が必要で、それは大きなストレスにもなりますが、日本の食べ物には絶対的な安心感があります」
食事そのものの内容だけでなく、接客面でも優れていると三宅さんが続ける。
「日本のレストランでは目が合っただけでウエーターが来てくれますが、ヨーロッパなどでは本当にぜんぜん来ないんですよ(苦笑)。しかも日本はオーダーしてから料理が来るまでの間が短くて済みますが、海外では長い時間待たされることも珍しくない。アスリートは分刻みのスケジュールで動いているので、食事で待たされるのは結構つらいものです。今回の東京五輪の選手村も食事内容のクオリティーはもちろん、『選手を待たせない』という意識が徹底されていることがすごいと感じました」
セルビアのスポーツジャーナリスト、レイド・マロウビックさんも、日本の飲食店での体験に感激したと話す。
「東京を訪れたのは今回が初めて。コロナのため行動が限られていましたが、おいしい料理に出合うことができました。ラーメンや刺身はこれまで食べてきたものとまったく別物だったし、何気ないカフェで飲んだコーヒーですらレベルが高く、『コーヒー文化は西洋のもの』という概念を覆す味わいでした。さらに、飲食店のウエーターはチップを期待しているわけでもないのににこやかで、コップの水がなくなるとすぐ注いでくれたことにも感銘を受けました」
見返りを求めるわけでなく、ゲストに心地よく過ごしてもらいたいという思いは、飲食店に限らず日本の多くの場面で見られる行動だ。この「おもてなし精神」こそが、海外選手や関係者たちの心を掴んだ最大の要因だ。
※女性セブン2021年9月9日号