中国の人気女優による巨額の脱税事件が、現地で大きな関心を集めている。中国国家税務総局上海市税務局は8月27日、税収徴収管理法、所得税法、増値税暫定条例などの関連法案・法規に基づき、女優・鄭爽(ジェン・シュアン)に対して、滞納金など含め、合わせて2億9900万元(50億8300万円、1元=17円で計算、以下同様)の罰金を支払うよう命じた。
鄭爽は2019年、中国のテレビドラマ『倩女幽魂』で主役を務めたが、この時の彼女の報酬(契約額)は1億6000万元(27億2000万円)であったと税務当局は指摘している。実際の報酬額であった1億5600万元は2つの契約によって支払われた。
1つは鄭爽の所有する会社が受け取る売上高として4800万元(8億1600万円)が支払われた。もう一つは、鄭爽が実質的に支配する別の会社が介在、スポンサーなどがこの会社に対して第三者割当増資を実施するといった形式で1億800万元(18億3600万円)が支払われた。
このほかにも、所有する企業の収入として所得をごまかしたものが見つかっている。2019年初から2020年末までにおける本来申告すべき所得は1億9100万元(32億4700万円)。この所得に対して、脱税分が4526万9600元(7億6958万3200円)、過少申告分が2652万700元(4億5085万1900円)、さらに滞納が888万9800元(1億5112万6600円)と計算された。
これらの金額について、その実額を払えば済むというものではない。企業収入を偽った部分は支払うべき金額の4倍、さらに悪質な脱税である“増資を装った部分”については5倍の金額を支払わなければならない。そのため50億円を超えるような巨額の支払命令となったのだ。
莫大な契約を勝ち取ったマネージャー
表に出てくる数字だけをみると、中国メディア産業の市場規模、脱税のスケールの大きさ、個人所得の多さばかりが目立つ。しかし、詳しく掘り下げて調べてみると、そんな単純な話ではなく、背後には中国社会の深刻なひずみが潜んでいることが分かる。
鄭爽は1991年8月22日生まれ、遼寧省出身の女優である。2009年にテレビドラマ『一起来看流星雨』に出演、それ以来、多数のテレビドラマで主演を張る人気女優だ。