「おしゃれ心」を捨てたわけではない
片づけを始めたきっかけは、長女で作家の神津カンナ(62才)と、次女で女優の神津はづき(59才)に迷惑をかけたくないという思いからだった。2人の娘は母の潔さにしきりに感心していたという。
「カンナとはづきは、『へぇ、お母さんって思いきりがいいねぇ』『もうここまで捨てたの?』とビックリしていました。でも最近は、『こないだ半分に減らしたけど、また増えたんじゃない? ちょっと見てあげる』と私の納戸をのぞきに来て、『もうこれいらないんじゃない?』って、それはそれは怖い検閲をするんです(苦笑)。親子じゃないとなかなか遠慮なく言えませんから、そういう意味で娘は便利な存在ですね」
高級ブランド品や思い出の和服に別れを告げても、「おしゃれ心」を捨てたわけではない。その時代、そのときの年齢に合わせて、“最先端”のおしゃれを楽しんでいる。
「いま目指しているのは『シンプル・イズ・ベスト』。いくら高級ブランド品だからって、時代に合わないバッグやアクセサリーに執着するのはみっともない。どんどん処分して、安物でもいいから、『うーん、イカしてる! カッコいい! かわいい!』と、そのとき感じられるものを女は身につけるべきです。
たとえばエルメスのバッグみたいなものは、1つくらいは残したっていい。日付と一緒に、『お父さんからのプレゼント』とかって書いた札を下げて残しておくと、両親の思い出の品として子供たちもおもしろがってくれるはず。邪魔にならない程度なら、残しておくのもいいのかもしれません」
物を減らし、身軽になるほど見えてくることもある。中村が、最後まで絶対に手放さないと決めているのが「明るさ」だと話す。
「私は明るいおばあさんが好き。くちゃくちゃのおばあさんになっても、ニコニコ笑っていたい。だって、おばあさんがマジメな顔でお説教していると、物語に出てくる悪い魔女みたいで怖いでしょ(笑い)。私の父と母も最後まで明るくて、おしゃれな人たちだったので、その血をうまく引いているといいなと思います」
自分の理想の生き方がはっきりしていれば、物に執着することはなくなるのかもしれない。
※女性セブン2021年9月16日号