コロナ禍の緊急事態宣言で酒類の提供が制限されていることで、大きな打撃を受けているのが居酒屋チェーンだ。アフター5のストレス発散の場として日本に定着しており、コロナ禍が落ち着けば、再び活気を取り戻すことだろう。ここではあらためて、日本の居酒屋チェーン誕生の歴史を振り返ってみたい。
居酒屋の源流は、酒屋で飲む“角打ち”にあるといわれるが、戦後にチェーン店が登場すると居酒屋市場は急成長。その代表が1950~1970年代に登場した『養老乃瀧』『村さ来』『つぼ八』だ。『香雪社』代表で、食の専門サイト『Food Watch Japan』編集長の齋藤訓之さんが話す。
「『養老乃瀧』は総合食堂が発祥でメニューの豊富さがウケ、『つぼ八』は店主家族が食べたいものをあれこれそろえるというスタイルで、大衆の支持を得たのです」
これらの中でも出店が早かったのが『養老乃瀧』だ。
「もともとは長野県松本市で『富士養老乃瀧食堂』をやっていたのですが、創業者がもっと商売を大きくしようと、1956年に『養老乃瀧』1号店を横浜市に開業しました。当時は酒のつまみだけでなく食堂メニューも充実。生ビール中80円、もつ煮込み40円、カツ丼100円などと看板にあります」(養老乃瀧広報・長島一誉さん・以下同)
ツケが常識だったこの時代に取り入れたのが、食券制だ。
「当時、飲み屋は勘定も“どんぶり”。それを明朗会計にしようと品書きに値段を表記し、前払いの食券制にしました。まだ自販機がなく、お客さんから注文を聞いてお金を預かると、係の人が食券売り場で食券を買い、それを持って厨房でオーダーを通すやり方でした」
1980年代に居酒屋ブームが起こり、1990年代には『モンテローザ』『ワタミ』『コロワイド』の新御三家が台頭。
「『和民』は冷凍食品を使わず安全食材で手作りする“居食屋”がコンセプト。毎朝店で仕込む“串盛り”(当時400円)などが人気でした」(ワタミ広報・菅則勝さん)
時代ごとに旋風を巻き起こしたチェーンがしのぎを削り、市場規模約1.6兆円の居酒屋業界を盛り上げた。コロナ禍が落ち着き、再び活気を取り戻す日を心待ちにしたい。
※女性セブン2021年9月23日号