第1志望の大学に合格するべく、懸命に受験勉強して入試に臨んでも不合格に終わることがある。その際の選択肢として多いのが、第1志望とは異なる他大学に進学するか、再挑戦するために浪人するか。とはいえ中には、一旦は大学に入学してそこに籍を置きながら、再び志望校合格を目指す「仮面浪人」をする人たちもいる。憧れを捨てきれず、仮面浪人を選んだ人たちの事情とは──。
「就職のことを考えると…」トップ私大に再挑戦
「仮面浪人していなかったら今の私はありません。憧れだった仕事に就くことができたのは、あの時代があったからだったと思っています」
そう当時を振り返るのは、都内の出版社に勤めるAさん(30代女性)だ。毎年、東大や早慶など難関大合格者を送り出す東京の私立高校出身だが、第1志望の大学には受からず、「練習」として受けた中堅女子大に進学した。
「両親ともに難関私大卒で、兄は難関国立大を卒業。私は高校の授業についていけなかったので、どうせ無理だろうと思って受けた国立大はやっぱり不合格。現役の時には浪人をする気力はなく、入れるならどこでもいいと思って受かった大学に進学しました。ただ、行った大学で高校名を明かす場面になると、同級生には『何があったの……?』と大体イジられました。私の通っていた高校から現役で行く人はほとんどいない大学だったので、意外に思われたんでしょう。
イジられるのとかはどうでもよかったんですけど、就職を考えた時、やっぱりこの大学だときついだろうな、と思い直して、再受験を決意しました。私はマスコミ系に行きたかったのですが、ただでさえ狭き門なのにその大学では実績がほとんどなく、不安しかありませんでした。そこで、OB・OGが多く豊富な実績がある“上の方”の大学に行くべく、仮面浪人をすることにしたんです」(Aさん)
幸いにも、親から仮面浪人の理解を得られたAさん。参考書代や受験費用は自分でアルバイトして払うという条件で、覚悟を決めたそうだ。大学での居場所は基本的には図書館で、帰宅後も食事時間以外はずっと勉強していたという。アルバイトがある日は、睡眠時間を削ってまた勉強。そうした生活の中では、当然つらいこともあった。