自身の出身大学よりも、レベルの高い大学院に進学する――。向上心が高い人に思えるが、最終学歴を“浄化”した「学歴ロンダリング」ではないかと、否定的な見解を持つ人もいるようだ。言われた当人が抱える事情や苦悩とは。
メーカーに勤務する30代の男性会社員・Aさんは、大学は私立大理系出身だが、大学院は東大を出ている。東大院に進んだのは、「学歴コンプレックスを払拭するためという理由もある」と正直に本音を明かしてくれた。
「大学1年の時は仮面浪人をしようと、講義中に大学受験の参考書を持ち込んでいたほどです。多くはないですけど、周囲にも同じような人がいました。やはり国立大へのコンプレックスが強かったですね……。僕の地元では、卒業した私大はあまり知名度がなく、地元国公立大が『すごい』と思われる風潮があって、地元国立理系のいとこや親戚たちにマウントを取られるのが悔しかった」(Aさん)
だが結局、仮面浪人は失敗に終わり、再受験は諦めたAさん。一流企業への就職で挽回しようと考えていたが、それでは根本的な「学歴問題」が解決しないと考え、自分の出身大学ではなく国立大学の大学院への進学を思いついたという。
「もちろん学費を安くしたいという思いもありました。私大に2年行くと250万円くらいかかりますが、国立なら半額の130万円くらいで済むので。院試に合格した時は、本当にうれしかったです。ただ、大学時代の知り合いからは、陰で『あいつ学歴ロンダリングしやがった』と言われていたようです」(Aさん)
就職後にも「学歴ロンダリング」をいじられることがあった。慶應大院卒の上司が、Aさんを紹介する時に、「こいつ院だけ東大」「最終学歴は東大だけど、大学は違う」などと、わざわざ「大学院だけが東大」だという“いじり”を入れてきたそうだ。
「『学部は○○大なんです~、なんかすいません……』と苦笑いするのが定番の回答で、正直、面倒です。そもそも大学や大学院を人前でわざわざ言うことなのか疑問ですが、まるで『お前は東大を名乗るにふさわしくない』とでも言いたげで……。上司も僕と同じように、学歴コンプレックスがあるのかもしれません」(Aさん)