しかし、深港通の実施はあくまで中国資本市場の国際化、自由化の一環である。保険業監督管理委員会は9月8日、保険会社が滬港通を利用して香港株を買うことを試験的に許可した。そのことが9日の株価上昇につながったのだが、こうした形で資本市場の自由化が進むと期待する市場関係者は多い。
滬港通を通じた本土から香港市場への売買動向だが、8月3日以降、9月9日まで資金流入が連続している。特に、9月に入ってからの資金流入額はそれまでと比べて大きく増えている。ちなみに、9日の香港市場における滬港通による買いの売買代金シェアは6.1%程度と推計されるが、本土の買いが香港地場の買いを誘う効果も考慮すれば、影響は決して小さくない。
第2に、世界的な金融緩和継続見通しが挙げられる。イギリスのEU離脱決定を受けて、世界全体が金融緩和に傾いている。アメリカでは口先の利上げ誘導発言はある。しかし、経済統計を見ても、国際情勢を見ても、金利を上げるのは困難な状況である。少なくとも、グローバルな投資家が新興国市場からアメリカへと資金を引き上げる動きは見られない。
香港ドルは米ドルにペッグしており、香港金融当局は金融政策を放棄せざるを得ない状態である。しかし、アメリカが利上げを行わなければ、香港においても金利は低いままである。
中国を背後に持つ香港は、世界の中でみれば相対的に経済活動が活発である。経済実態に対して現在の金利水準はやや低い状態とみられる。そうであれば、流動性過剰で株価は上がりやすくなる。