第3に、中国経済への信頼回復が挙げられる。
成長率が下がること自体、問題ではない。当局が経済をコントロールできなくなることが心配である。現状の経済政策は短期的な景気回復に重点が置かれているのではなく、供給側改革、成長産業の育成など長期的、持続的な発展のための戦略に重点が置かれている。マクロコントロールの結果としての“低成長”である。そのことを世界の投資家は理解しているからこそ、景気が減速する中で、香港株式市場に資金を投じている。
懸念材料はアメリカである。9月9日のNYダウは世界的な金利上昇やアメリカの利上げ懸念などを背景に394.46ドル下落している。FRB(連邦準備制度理事会)が金融システムの正常化を優先させて、無理な利上げを行えば、金利負担増でオイルシェール産業、住宅産業、自動車産業が大きな影響を受ける。長期金利の上昇は財政逼迫を加速させる。景気が過熱し、金利を上げざるを得ないほど実体経済が良いなら別だが、そうでない限り、これ以上の利上げは無理だろう。
FRBが無理な利上げを行わず、NYダウが崩れない限り、香港市場は大丈夫だろう。年末に向けて香港ハンセン指数は2015年4月27日の高値28588.52ポイントを目指す展開と予想する。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。