今年の秋には衆議院選挙が控えており、近いうちに街頭演説を目にする機会も増えるだろう。立候補者の中には過激なスピーチをする人もいるが、こうした選挙運動での主張が法律違反となる可能性はあるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
最近の選挙戦で気になることが。それは科学的根拠もなく「コロナは単なる風邪」と主張した候補者がいたり……。事実が明確ではない事柄を選挙中に掲げた候補者に対し、選挙後にペナルティを与えるべきです。もうすぐ衆議院選挙。このような荒唐無稽のお騒がせ候補者を罰する手立てはないのでしょうか。
【回答】
選挙運動の演説で、何をいってもよい、ということはありませんし、ポスターに、なんでも書けるわけでもありません。こうした表現行為が問題になる局面を分けて考える必要があります。
まず、表現行為で他人を侮辱したり、その名誉を毀損すると、たとえそれが選挙公報や選挙ポスター上での記述であっても、あるいは政見放送であったとしても、正当な理由がない限り、不法行為になりますし、犯罪も構成します。どんなときでも、責任が問われないのは、国会議員が国会で行なう演説や討論による場合のみです。
公職選挙法では、当選目的で候補者の身分、職業、経歴、所属政党などについて虚偽の事項を公表した場合、2年以下の禁固、または30万円以下の罰金、これが落選させるためだと、4年以下の懲役か禁固、または100万円以下の罰金で処罰されます。こうした行為を政見放送で行なった場合は、さらに重く処罰されます。