中高年世代の中には、子供時代に学校が終わると10円玉や100円玉を何枚か握りしめて駄菓子屋に行き、様々なお菓子を買った思い出を持つ人も多いのではないだろうか。そんなかつては当たり前の風景だった街の駄菓子屋も、今ではすっかり見かけなくなった。そうした中で、昨年、東京から佐賀県唐津市に移住したネットニュース編集者の中川淳一郎氏(48)は、近所に今も元気に営業中の駄菓子屋を見つけて驚いたという。少子化が進み、子供のライフスタイルも多様化する中で、今も生き残っている駄菓子屋は何が違うのだろうか。その経営の秘密を店主に聞いてみた。
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佐賀県唐津市の「五福の縁結び通り」に「からつだがし屋さん」という店があります。ここは、平日は子供達の学校が終わる15時に開店し、19時まで営業しています。土日祝日は11時から18時までです。
店の前にはベンチが置かれ、営業時間中は子供達が座って楽しそうに駄菓子を食べながらダベっています。ここで買った駄菓子を持って近くの公園に行って、皆で遊んでいることもあります。親御さんが子供を連れてきて自由に駄菓子を選ばせる様子など、“駄菓子屋らしい風景”を見ることができます。
私も時々ビールのつまみを買うために利用するのですが、10円(税込み・以下同)からの昔懐かしい駄菓子がたくさん売っています。森永の「チョコボール」が80円で売っていたり、通常のスーパーやコンビニでも売っているようなポテトチップスや殻付きピーナッツなどの商品もある他、200円のくじや、本来1本10円の「うまい棒」を30本まとめて270円で売ったりもしています。
私がいつも買う時は20円の「キャベツ太郎」と30円のラムネ菓子の合計50円とかそういった程度です。子供達も大金を使うわけではない。今の時代、一体これでどうやって経営が成り立っているのだろうか……と思い、同店を運営する(有)井上商事の代表・井上誠二さんに話を聞いてきました。まずはお店の客さんたちがどのような買い方をされているのかについて。
「子供達は100円玉を握りしめてやってきます。ウチの店はすべて税込みで10円単位です。さすがに子供に消費税の計算をいちいちさせるわけにはいきません。子供連れのご家族もやってきて『100円までだよ』や『200円までだよ』などと言い、ピッタリの金額になったら子供達はホメてもらえます。『今日はオーバーしたね』などということもあるわけで、そうした教育的な面もあることがこの店が支持されている理由の一つかもしれません」(井上さん・以下同)
店内は明確に「10円コーナー」「20円コーナー」「30円コーナー」「40円コーナー」「50円コーナー」に分かれており、それ以外の金額の商品には値札シールが貼られています。井上さん曰く「こうして分かりやすくしなくては子供達が分かりづらい」とのことです。
ただ、そうはいっても一品ずつの商品価格が安いので、はたして商売になるのでしょうか? さらには、たとえばコンビニで「うまい棒」(10円)を1本買った場合は8%の軽減税率で「切り下げ」になるため10円で済みますが、2本の場合は21円になります。しかし、この店を含めた多くの駄菓子屋では20円で売っています。そうなると店は消費税まで支払わなくてはいけなくなる。