実際、経済活動再開に加え、高騰するLNG(液化天然ガス)などの代替需要を背景にWTI原油先物価格の上昇は続いている。石炭価格などの高騰を背景とした電力不足から、アルミニウムなども記録的な高値更新となっている。さらに、今年はラニーニャ現象により日本や米国で厳冬となる確率が高いと指摘されており、冬季シーズンに向け、商品市況の高騰を受けたインフレ加速は一段と進む可能性が残されている。引き続きインフレを巡る思惑や金利動向には注意が必要だ。
一方、岸田首相の金融所得課税引き上げを巡る発言などをきっかけに、政権に対する過度なネガティブ視は後退。衆院選投開票日までは株高になりやすいアノマリーも再び意識されているようで、先週は海外勢の買い戻しも進んだ。与野党の支持率格差が開いていることで、衆院選後の政権基盤の安定に期待する向きもあり、日本株の下値不安は後退してきた様子。
ただ、各党の公約が発表されたが、岸田政権の掲げる政策については具体性が乏しいとの批判が根強い。政権支持率も歴史的な低水準にとどまっている。衆院選後も支持率が向上しなければ、来夏の参院選に向けた懸念も残り、政権基盤が安定するとはいえないだろう。大規模な経済対策についても、従前財務相だった麻生太郎副総裁による影響力もあってか、以前より期待視する向きは少なくなってきている。このため、選挙期間中の株高ラリーも強くは期待しにくい。
結局、外部環境や国政に関する不透明感は依然くすぶり、買い材料に乏しい。当面、下値が固い一方で上値の重い展開が続きそうだ。こうした局面打開には、衆院選の結果判明以外では、やはり企業業績が必要となる。
振り返って、製造業決算の先駆けとなる安川電機<6506>の6-8月期決算は決して悪くはなかった。第1四半期に続き通期計画も上方修正された。しかし、市場予想の範囲内に収まったこともあり、その後の株価推移は軟調。インフレ懸念などがくすぶる中、製造業などの景気敏感株の決算ハードルは高いと想定しておいた方がよさそうだ。
そのほか、今週は週初に中国で9月の鉱工業生産や小売売上高のほか、7-9月期の国内総生産(GDP)が発表される。不動産業の債務問題や電力不足の問題などを背景に、中国の景気減速が懸念されているだけに、注目度は高い。指標が大きく下振れるようだと、改めて中国リスクが意識され、中国での売上比率が高い銘柄には売り圧力となる可能性があるため、注意したい。
なお、今週は18日に9月首都圏マンション販売、中国7-9月期GDP、中国9月鉱工業生産、中国9月小売売上高、米9月鉱工業生産、19日に衆議院選挙公示、米9月住宅着工件数、20日に9月貿易収支、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、21日に決算:ディスコ、米9月中古住宅販売、22日に9月全国消費者物価指数などが予定されている。