買い物を済ませる間、何気なく駐輪場に止めた自転車が、思わぬトラブルの原因となることもある。例えば自分の自転車が、駐輪場の柱につながれた他人のペットを傷つけてしまったら──。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
スーパーマーケットの駐輪場に自転車を止めて買い物へ行きました。戻ってみると、男性から「自転車が倒れて、うちの犬がけがをした。治療費を払ってください」と言われました。その男性は駐輪場のバーに犬をつないで買い物に行き、戻ったら犬が私の自転車の下敷きになっていたそうです。そもそも駐輪場は自転車を止める場所だし、倒れたのは強風のせいです。私が治療費を支払わないといけないのでしょうか。(埼玉県・47才・パート)
【回答】
自転車が倒れると、人をけがさせたり物を傷つけたりすることが予見できますから、倒れないよう駐輪する注意義務があります。不安定な止め方をして転倒事故が起きれば、この注意義務に違反した過失による不法行為となり、発生した損害の賠償義務を負います。
スーパーの駐輪場といっても形態はいろいろで、自転車ラックの有無、監視員の有無など状態はそれぞれ異なります。駐輪施設があったり監視員がいる駐輪場であっても、駐輪する人に注意義務があることに変わりはありませんが、実際に危険な駐輪が起きる可能性は少ないでしょう。ご相談によると、バーがあるとのことですので、内外の仕切りがされている程度の駐輪場かと思います。そうすると止め方が争点になります。
駐輪場の状態や自転車のスタンドの種類によって注意義務は変わってきます。駐輪場の地面に凹凸や勾配があるとスタンドを立ててもグラグラすることがありますが、平坦な駐輪場で自転車のスタンドに異常がなく安定した状態で駐輪させていれば、転倒が起きることは予見できないので、注意義務違反はありません。