それでも転倒が起きた以上、止め方に問題があったことを推測させます。しかし、強風が吹いて周囲に倒れた自転車が多くあり、駐輪そのものが危険な台風や強風注意報が出されていれば、駐輪が原因の転倒ではなく、過失はなかったと言えます。気象データで参考になる記録があるかもしれません。
こうした有利な事情がなくても、バーにつながれた犬のリードが絡んで自転車を倒した可能性もあります。あなたの場合、飼い主が犬をつないだ時点まではスタンドが正常に機能していたはずです。したがって過失があったとは言えないように思います。
しかし、止めた場所が平坦でなく、スタンドだけでは安定性を欠くときは、人やほかの自転車が触れたりして倒れる可能性があり、止め方にも普段以上に注意が必要です。もし安定確保に配慮を欠くと、過失が認められ、治療費の賠償もやむを得ないと解されることもあります。
しかし、その場合でも犬が駐輪場に入れるような状態でリードをつないだ飼い主は、損害の公平な負担を調整する過失相殺の考えから、治療費全額の負担を要求することは認められないでしょう。目撃者を探したり、現場の状況を確認し、自分の駐輪方法に過失があったかどうかを熟慮して、要求を拒否するか、交渉するか判断してください。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※女性セブン2021年10月28日号