家族の知られざる裏の顔が露呈するのが、「遺産相続」だ。遺言書がなかったために、家族が大揉めしてしまうケースも珍しくない。さらに第三者が介入することで、話がこじれることも……。実際にあったある男性の相続トラブル体験談と専門家のアドバイスを紹介する。
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私(55才)は長男として、弟2人の面倒をよく見てきたつもりです。次男がいじめられたときは矢面に立って守り、三男が投資に失敗したときは500万円の借金を肩代わりしたことも。弟たちも、私には頭が上がらないと言ってくれ、兄弟の絆は固い、そう信じてきました。あの日までは……。
母に次いで父も亡くなったときも、朝まで慰め合い、実家で酒を酌み交わしました。遺言書がなかったため、法定相続にのっとり、500万円相当の宅地と1000万円の現預金を3分割することに。私が宅地を、弟たちは現金500万円ずつにしようと話し終えた直後、次男が放った一言が、バトル・ロワイヤルの火蓋が切られた瞬間でした。その一言とは、
「一応、嫁さんにこれでいいか聞いておくわ。うちの嫁さん、うるさいからさ」──。
かくして葬儀の直後、次男の嫁が私たちに詰め寄ってきたんです。
「お義父さまが残した現預金が1000万円って、少ないんじゃありませんか? 預金通帳を見せてください!」
この発言に触発され、三男の嫁までリングに登壇。
「あの家の時価がたった500万円って絶対嘘! 一級建築士にオーダーした贅を尽くした家だと聞いているわ!」
これを聞いた私の妻まで、
「何も知らないくせにいい加減なこと言わないでよ」
と大反論。そこで私が、
「いやでもおれたちはもう納得した話だよな」
と弟たちに話しかけると目をそらす……。おいおい、どうしたお前ら!
「たまにしか会わない兄貴より、毎日顔を合わせる嫁さんの顔を立てないと、後が怖いんだ」
だって。結局、両親名義の預金通帳をすべて見せ、残高は1000万円だと証明。さらに、ほかの不動産業者に査定してもらうと宅地の時価が300万円程度とわかり、嫁たちは白けた顔でバトル終了。でも、兄弟の仲の亀裂は入ったままとなりました。