タイミングの悪いことに、各国は環境対策の強化に取り組み始めたところである。たとえば中国では、環境を重視する「双炭政策」の開始によって、石炭供給を抑える政策が効きすぎてしまい、石炭需給が逼迫、石炭を主要燃料とする発電所では十分な発電量を確保できない事態に陥っている。足元では当局が急遽、石炭供給を増やす措置をとったことで落ち着きを取り戻しつつあるものの、寒さ次第では、電力不足が社会問題になりかねない状況だ。
商品先物のアナリストたちは、投資家に向けて、厳冬になれば豆類、油脂、トウモロコシといった農産物や、天然ガス、暖房用石油製品、石炭、綿紡績、化学肥料などの価格が上がるといった予想を提供している。株式担当のアナリストたちの中には、ウインタースポーツ関連や、冬物衣料関連にチャンスがあるといった見方をする者もいる。予想の精度については何とも言えないが、一つだけ確かなことは、この冬の気象の変化は社会や経済に大きな影響を与える可能性が高いということである。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。