バブル期に大学生活を送った両親からは「気の毒」
Kさんが進学したのは専門性が高く、実習が主となる学科。とりあえず授業はマジメに受けているが、授業以外の学生生活は充実には程遠い状況だという。
「教室では長机に1人ずつ座るルールで、授業の前や後もおしゃべりする雰囲気ではありません。授業が終わったら学校に留まらず、すぐに下校しなくてはいけませんし、食堂も1人おきに座るルールなので、全員が“ぼっちめし”。それでも何とかクラスに友達は出来ましたが、それも2~3人だけで、友達というか知り合いレベルな付き合いです。
学園祭は2年連続中止なので、一度も経験しないまま卒業することになります。入学式は2年生になって1年遅れで行われましたが、“いまさら”と欠席する人が多く、まったく盛り上がりませんでした」
そんなKさんを見て、しきりに気の毒がっているのは両親だ。父親も母親もバブル期に大学生活を送り、授業の後はサークル活動や飲み会、週末はドライブ、夏は海や山、冬はスキー、長期休暇は海外旅行と遊びまくった思い出の持ち主たち。家と学校をひたすら往復するだけのKさんの大学生活を「気の毒だ」「もったいない」としきりに憐れんでいるが、Kさんは至って冷静だ。
「両親はしきりに、『大学時代は人生で一番楽しい時期なのに』『いま遊ばないでいつ遊ぶの?』みたいなことを言いますが、正直、これ(コロナ禍での大学生活)しか知らないので、別に“もったいない”とか“悔しい”という感情にもピンとこないというか……。
家にいる時間がたっぷりあって、好きな動画とかもいっぱい見られますし、自分だけ独りぼっちなら落ち込むでしょうが、周りも似たような状況なので、そういった悩みもない。就職活動もリモートが多くて、いつもの年よりラクな気がしますし、これはこれで全然アリです」
ただ、Kさんが就職先として目指しているのは、入社してしばらくは極めてハードな業務が続くことで知られる業界。両親は、コロナ禍でもめげない娘をたくましく感じつつも、「いつか、もっと遊びたかったと爆発するのではないか」と、今から気を揉んでいるそうだ。