日本経済はようやくコロナ自粛の長いトンネルを抜けようとしている。日本経済は欧米や中国より「周回遅れ」の“一人負け”と言われたが、ワクチン接種が先行した米国経済の回復ぶりを辿るとこれから日本で起きるシナリオが見えてくる。
米国ではワクチン接種率が5割に迫った今年春から消費が急拡大し、3月の小売売上高は前月比9.8%の伸びで、自動車、家電、衣料、スポーツ用品などが売れまくって軒並み2桁増。4月には全米の飲食業の売上高がコロナ前を上回り、その後も増加、人手不足が深刻化している。
それに伴って企業は設備投資を増やし、実質GDPは日本がマイナス成長だった今年1~3月期に6.4%増(年率換算)、4~6月期も6.6%増となり、株価(ダウ平均)も史上最高値を更新した。では、日本株はこれからどうなっていくのか。
「日経平均株価は年内に3万2000円、来年4月末には3万4000円までいくでしょう」
マーケットアナリストの平野憲一氏はそうみる。景気回復が遅れた日本に“時の利”があるからだ。
世界各国がコロナ禍の経済悪化を食い止めるために一斉に金融緩和政策を続けたことで“カネ余り現象”が生まれ、世界の投資マネーが経済好調な米国の株式市場に流れ込んでNYダウは史上最高値の更新を続けている。
しかし、その米国経済はV字回復が終わり、物価高騰で金融緩和からの出口戦略を模索している。
「おそらく欧米は11月に正式に緩和縮小の方向に動き出す。しかし、日本はまだ景気回復の端緒についたところで、金融緩和を転換できる状況ではない。日本企業の業績は第4四半期(来年1~3月)にかけて上向き、かつ、金融緩和が続くのだからダブルで株高に働くと考えられます」(平野氏)
そんな日本市場に世界の投資マネーも流入する。株式評論家・植木靖男氏もこういう。
「史上最高値をつけている米国の株価上昇は年内に終わる。そうなれば世界の投資マネーは米国から離れて次の投資先を探し、日本の株式市場に向かうと考えられる。なぜなら、世界のマーケットを見渡しても、日本は先進国でコロナ後の景気回復が最も遅れた国で、これから景気が明るくなると期待できる唯一の市場だと考えられるからです。外国人投資家も日本企業の業績が良くなると判断しており、投資のチャンスは逃さないでしょう」