来年は「年金」を巡る複数の制度変更が控えている。新ルールにうまく対応できるかで、家族の資産寿命は大きく変わる。
注目度が高いのは来年4月からの「在職老齢年金」のルール改正だ。これまで、厚生年金を受け取りながら働く60~64歳の人は、“年金+給料”が月額28万円を超えると、超過分の年金の半分が支給停止となった。年金が月額10万円の人の場合、月給18万円までは年金が満額支給されるが、たとえば月給が30万円になると年金が6万円もカットされるのだ。
今回のルール変更によって、年金と給料が合計47万円を超えるまでは年金がカットされなくなった。年金月額10万円、月給30万円の人でも、年金満額受給が可能になる。
そのため“年金受給者もどんどん働けるようになる制度変更だ”と喧伝されている。ただ、LMC社労士事務所代表で社会保険労務士の蒲島竜也氏は「この新ルールの恩恵を受けられる人はかなり限られる」と指摘する。
「60代前半に特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのは、男性の場合、原則として昭和36年(1961年)4月1日以前に生まれた人までです。つまり、今年度以降に60歳を迎えた人たちはこの改正の恩恵を受けられません。行政の側はうまく考えていて、対象者が極端に少なくなるタイミングで、見せかけの“アメ”の改正を実行したわけです。
私はむしろ、今回のルール変更のなかで“ムチ”の部分に着目して対策を練るべきと考えます」
蒲島氏が“ムチ”として捉えるのが、2022年10月からの「厚生年金の適用拡大」だ。
これまで、パートなどの短時間労働者が厚生年金に加入しなくてはならない条件として、週の労働時間が20時間以上、月額賃金8万8000円以上といったものに加えて、「従業員501人以上」の企業と定められていた。それが「従業員101人以上」に広げられるのだ。
「アルバイトやパートをどんどん厚生年金に加入させる意図があり、3年後には企業規模要件は『従業員51人以上』まで拡大されます」(蒲島氏)