──社長就任は昨年4月。コロナ禍の中での船出でした。
小川:昨年は月によっては厳しい時期もありました。ただ、在宅勤務や在宅学習が増えたことで、家庭用プリンターに追い風が吹きました。当社はモノづくりのキーワードとして「省・小・精の技術」を掲げています。「省エネ・小型・精密」という意味ですが、その考え方はコロナ禍によって加速したというプラス面も感じます。
インクジェットの強みを活かす
──大黒柱はインクジェットプリンターですが、他社製品との違いは?
小川:他社さんのプリンターは、熱を加えてインクをノズルから吐出させるタイプ(サーマル方式)が多いです。それに対して、当社は電圧を加えて機械的にインクを水鉄砲のように押し出し吐出させるタイプ(ピエゾ方式)です。
熱を使わないのでレーザープリンターのようにウオームアップ時間が不要で、すぐに使うことができる利点があり、省エネで環境にも配慮した製品といえます。
──ただ、法人向けはレーザープリンターが優勢です。
小川:確かにオフィス用プリンターは高速印刷に強いレーザーが9割以上を占め、インクジェットは数%程度です。当社にもインクジェットの高速機はありますが、残念ながら商品ラインアップが豊富ではありません。オフィス向けの売れ筋は中速機ですので、この分野を強化して市場に投入していきたいと考えています。
環境問題への意識が高いヨーロッパでは、“熱を発生させるレーザーより、インクジェットのほうが望ましい”という意識が定着しつつあります。レーザープリンターはトナーやドラムなど交換部品も多いですから、インクジェットの「環境への貢献」も訴えていきたい。
──社長就任後に、社内で「紙の半減運動」を推進しています。プリンターメーカーとしては難しいテーマですね。
小川:「紙を半減しよう」と言い出した当初は、社内に抵抗もありました。ですが、ペーパーレスの流れは止められません。
当社はプリンターメーカーではありますが、環境に配慮したビジネスをしていくことを第一義に掲げています。“仕事や生活で紙を使うことが当たり前ではない”と身をもって感じなければ、新しい発想は出てこない。
今のビジネスに多少逆風だとしても、「社会課題解決ファースト」という意思を大切にして、そのアプローチの中から新たなビジネスを産み出したい。