──効果は具体的に何か出ていますか?
小川:5年前に製造・販売を始めた「ペーパーラボ」は世界初の乾式オフィス製紙機で、使用済みの紙を原料に機器内の保湿に少量の水を使用するだけで、文書情報を完全に抹消したうえで新たな紙を再生産します。
紙の再生産についてはいろいろなアイディアが出ています。古紙を細かく砕き、それをある程度固めて梱包材にし、発泡スチロールの代わりにするといったこともできます。強度をさらに高めれば「紙製の机や椅子」なども作れるようになります。できるだけ早く実用化し、ビジネスとして確立していきたいですね。
──セイコーエプソンの将来像は?
小川:環境に貢献する姿勢を掲げ、技術力で応える企業―そのように見てもらえる会社を目指します。“環境に資することをビジネスに”という考え方には社員も共感してくれています。
現在の当社の年間売上は約1兆円というところです。それをむやみに拡大するのではなく、社員一人ひとりが目的を持って働き、社会に貢献できている実感を得られる会社にしていきたい。私が入社した頃のエプソンもそういう会社でしたから。
【プロフィール】
小川恭範(おがわ・やすのり)/1962年、愛知県名古屋市生まれ。1988年に東北大学大学院工学研究科修了後、セイコーエプソンに入社。VI(ビジュアル・インスツルメンツ)事業推進部長、ビジュアルプロダクツ事業部長などを経て、常務取締役などを歴任。2020年より現職。
【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2021年11月12日号