名古屋は製造業を中心とした全国有数の「モノづくり」の街として知られる。2020年工業統計によると、愛知県の製造品出荷額等は47兆9244億円。なんと43年連続で日本一を誇る。その割合は全国の約14.9%を占め、2位の神奈川県に2.7倍もの大差をつけるダントツぶりだ。
名古屋を代表する企業といえば、トヨタ自動車やその系列部品メーカーが有名だが、他にも数々の企業が経済の堅調を支えている。
1908年創業のブラザー工業は、ミシンの修理業から出発し製造を開始。その技術力を応用してファックス、プリンター、通信カラオケと、時代と顧客ニーズの変化に対応してビジネスを展開してきた。世界40以上の国と地域に進出し、売り上げの80%以上が海外というグローバル企業である。
コロナ禍でも、ステイホームで家庭用ミシンが大幅な収益増、テレワークでプリンターも需要が伸びるなど好調そのものだ。その背景には「名古屋」ならではの地域性もあるという。
「さまざまな事業を展開してきた当社の強みは『変化対応力』です。また、愛知県は世界最大の自動車メーカーが立地していることで、カイゼンやコスト意識などモノづくりに対する高い意識が地域全体に根付いています。また世界市場を意識した事業展開・経営戦略をとってきた企業が多いことも当地における製造業の特徴といえます」(CSR&コミュニケーション部)
角膜コンタクトレンズを日本で初めて実用化したメニコンも名古屋の企業だ。「人真似をしない」「何事にもチャレンジする」という創業者の思いが受け継がれ、日本初のソフトコンタクトレンズや酸素を通すハードコンタクトレンズも開発した。
「当社は、高品質なハードコンタクトレンズ生産では難しいとされたモールド製法による大量生産・実用化に世界で初めて成功しました。また、レンズの内面を下向きにしてより清潔に装用できる格納容器も開発するなど、オンリーワンの製品を生み出しています」(渉外広報部)
業績も右肩上がりで伸び続け、今期(2022年3月期)で7期連続の最高益を見込んでいる。こうしたモノづくり企業の好調も、2021年の基準地価上昇に大きく寄与している。
※週刊ポスト2021年11月19・26日号