コロナ禍で経済的な打撃が叫ばれる中、名古屋圏で“脱却”の兆しが見え始めた──。国土交通省が9月21日に発表した2021年の基準地価で、名古屋圏(愛知県全域と三重県北部を含む)が商業地1.0%増、住宅地0.3%増と、ともに2年ぶりに上昇に転じたのだ。
大阪圏が商業地0.6%減、住宅地0.3%減と下落し、東京圏も商業地、住宅地とも0.1%の微増。名古屋圏の堅調ぶりが際立っている。
特に商業地は絶好調で、名古屋市中心部にある中区錦では、3つのビルの上昇率が10%を超えた。最も高い11.5%増となった「名古屋鴻池ビルディング」の1平方メートル当たりの地価は369万円で、コロナ前(2019年)の340万円を上回った。
コロナにもかかわらず地価が上昇した要因について、地元の不動産鑑定士の小森洋志氏が指摘する。
「現在、名古屋中心部の栄、伏見エリアで大規模な再開発が進んでおり、将来への期待感が高まっています。しかも名古屋の不動産は東京・大阪に比べて割安感があり、低金利で資金がダブついた外資系やファンドが名古屋中心部の大型物件を購入し、地価を押し上げました。昨年、名古屋市が栄から名古屋駅前にかけて容積率を大幅に緩和し、高層ビルが建てやすくなったこともあり、投資家の目は名古屋に向いています」
中心部の栄地区では、2020年9月に街のシンボルとして親しまれる「名古屋テレビ塔」がリニューアルし、総合商業施設「ヒサヤオオドオリパーク」が開業した。地元住民が「昔は夜中になると不良外国人のたまり場だった」と振り返るテレビ塔一帯は、今やすっかりオシャレなエリアに生まれ変わった。
栄周辺はヒルトンやマリオット・インターナショナルなど外資系高級ホテルも進出を予定。一方で、インバウンドに頼らない経済構造も快進撃を後押しする。
「訪日観光客に依存していた大阪の道頓堀の商業地は全国でも最大の下落率(18.5%)となりましたが、名古屋は良くも悪くもインバウンドへの依存が圧倒的に低い。これも地価がコロナに左右されなかった一因です」(同前)